債務整理の特異性と共通点

アメリカでは8年ぶりに民主党から共和党への政権交代が実現した。 「経済がこれほど好調なときに、G副大統領が接戦に持ち込まれたことが、2000年の大統領選挙の特色だ」とJ教授は今回の選挙を総括された。
ここにある種のアメリカの異常性が秘められているのである。 裏を返せば、共和党の鬼気迫る怨念あるいは、政権奪回への執念が読みとれるのである。
共和党は1996年の大統領戦で、D大統領候補と「金本位論者」のKンプ副大統領候補の組み合わせで戦ったが、C大統領の再選を阻止できなかった。 共和党はCリントンの「国民に人気のある共和党の政策の横取り戦術」に、なすすべがなかった。
共和党は2000年の大統領戦に向けて、総力戦の布陣をしいた。 4年間かけて21世紀の第1・四半期つまり2025年までは、共和党の「世界戦略シナリオ」で、世界を仕切れるようなダイナミックな「グランド・ストラテジー」を練り上げていたのである。
この「グランド・ストラテジー」は、2000年大統領選挙向けの「思いつき戦略」ではない。 共和党のN大統領以来の、「共和党理念」の再確認と再構築であり、R大統領の「ニューディール理念」へのアンティテーゼの色彩が濃厚である。
それは「他者に依存」するより「自己責任」「自己努力」する人間の生き方の方が、「はるかに人間の尊厳」を尊ぶ価値観であるとの共和党からの問題提起であり、これはAイン・ランド女史の提唱した「リバタリァン」精神とも価値観を共有するものである。 共和党のこの問題提起は、アメリカ国内に向けられているばかりではなく、世界の同盟国及び非同盟国にも強いメッセージを発しているのである。
これを受け止め損ねた国家はアメリカと  を繰り返し、やがては「市場メカニズム」によって、市場から排除される運命が待ち構えているかもしれない。 共和党の「グランド・ストラテジー」の骨格は、1970年代初頭のN大統領の諮問への答申「ウィリァムズ・レポート」と、1980年代初頭のR大統領の諮問への答申「金委員会報告書』である。

この2人の大統領の強烈な「人間への価値観」(共産主義は非人間的である)が、バック・ボーンとなっているのだ。 冷戦に勝利したアメリカは、「第2次世界大戦」と「東西冷戦」という世界規模の大戦に2連勝した「唯一超大国」である。
それまでアメリカは、アメリカ資源の最優秀部分をこれらの戦争勝利の目的に投入していた。 が、冷戦崩壊によりアメリカはこうしたくびきから全面的に解放された。
その結果が1990年代の「独り勝ち経済」の達成である。 だが、忘れてならないのは、「ワシントン・リヤド密約」による石油価格の長期の「低位安定」であり、石油の安定は「独り勝ち経済」に必要不可欠な条件であった。
IT革命のみに目線を奪われ、「石油」に戦略的配慮がされていない視点からの経済予測は、不安定なものとなるだろう。 湾岸戦争で王政存続の危機に見舞われ、そして短期間にこの窮地から解放されたサウジアラビアは、共和党のB大統領には感謝と恩義を感じているが、民主党に対しては、もとより義理立てする筋合いではない。
ここが石油問題を解くキーワードである。 この点が2000年の選挙期間中の石油価格動向の戦略的背景である。
21世紀のアメリカの「第2次パックスアメリカーナ覇権構想」は、「石油」「ドル」「金」支配による「金融制覇による市場コントロール型覇権国家」が想定されているのである。 「N・ショック」は、アメリカの戦略的後退であり、1960年代を超える「独り勝ち経済」の再現が秘められていたのである。
日本はこの点を理解できず、また見ぬけなかったのである。 農耕民族特有の「連続思考」から脱却できなかった。
第2次世界大戦の敗戦でも、また「プラザ合意」前後からの対日金融戦争でも再び敗北した。 日本民族は自分が負けても根本的自己の弱点に「メス」を入れないで、状況的対処で乗り切ろうとしてきた。
C政権への日本の対応は、典型的にこの手法であった。 共和党は「まず原則ありき」で、新しい対日政策原理・原則が前面に出てくるので、「玉虫色時間稼ぎ」戦法では全く歯が立たないであろう。

そこでここでは、「N・ショック」から始まる「独り勝ち経済」の達成へのアメリカの対内、対外戦略の分析と、「独り勝ち経済」再現後の「独り勝ち経済まえがきの永続化」と「経常赤字4000億ドル対策」としての「金本位制復帰大戦略」の解明を、試みたものである。 金は長いあいだ眠り続けていた。
眠れる森の美女のごとくに。 魔法にかけられた美女の魔法を解く王子様は、いつまでも現れないのか。
金に魔法をかけたのは、N大統領であった。 1971年8月晦日に、Nクソンは金を眠らせる魔法をかけた。
「N・ショック」という魔法がかけられてから、金は長い眠りにつくことになった。 この魔法によって金の魅力に透明なベールがかけられてしまった。
人々には、金がもつ「本源的価値」が見えなくなってしまった。 古代のエジプト王朝のミイラは、なぜ棺の上を黄金で覆い、生前を彷彿とさせる表情のマスクで装飾されていたのであろうか。

ツタンカーメン王の黄金のマスクには、額に蛇の彫像がある。 エジプトでは、ファラオは神と同一視され、神は黄金の肉体を持ち永遠の存在と考えられていた。
死んでも黄金で覆われる事により、ファラオは不死の生命を持ち続けると信仰されていた。 さらに、蛇は脱皮しながら生命を伝えていく不死の象徴と信じられていたので、黄金の蛇によってファラオの不死再生を願っていた。
金にまつわる不死の思想は、東洋にもあった。 中国の古典の「抱朴子(ほうほくし)』には、不老不死の薬「金丹」の話がある。
秘法により金液(液化した黄金)や黄金を元に還丹(薬を還元変化)させることにより、金丹(金を主成分とする仙薬)を作る。 これを飲めば仙人となることができ、不老不死が得られるという。
金と人類との出会いは、人類が金を貨幣として使用するより、ずっと古い歴史がある。 たとえ土の中に長く埋められていても、取り出せばその輝きは失せない。
太陽を思わせるあの輝きが人類の心を捉えたに違いない。 世界各地の遺跡から出土する黄金の逝品からは、宗教的祭器として使われたことを思わせるものも多い。
人類と金の結びつきは運命的出会いであったのかもしれない。 人類が最初につくった金貨は、紀元前670年リディア王国のギゲス王によるといわれている。
それまで銀塊や延べ棒や銀貨が貨幣として使われていた。 しかし金貨が登場すると、金貨は「貨幣の王」の地位についた。
なぜなら金貨は銀貨よりもはるかに多くの価値を移動させたり、貯蔵することが可能だったからである。 金の自然の美しさに加えて、金のこのような機能が、金の貨幣としての地位を高めた事はいうまでもない。
秀吉が作った天正大判は美術品としての美しさと気品も備えている。 「N・ショック」が巧妙な魔法であったのは、N大統領が「アメリカが負けた振りを演出した」点にある。
この演出のため各国は、「アメリカが弱音を吐いた」と、早とちりしてしまった。 ここに落とし穴があった。

「N・ショック」の中身とは、アメリカがドルと金の交換には今後応じない、と一方的に宣言したことである。

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